カリスマ美容師・坂巻哲也さんの先天運解読と喜神・忌神
今回は虎の舞の方でも取り上げましたが、先日亡くなられたカリスマ美容師・坂巻哲也さんの先天運を解読したいと思います。坂巻さんの命式は少し見方が難しいところもありますので細かく解説したいと思います。
早速見ていきましょう。
坂巻哲也さんの命式と日干強弱
坂巻哲也さんは1962年12月16日とあります(ウィキペディア参照)。命式は以下です。
天干 | ? | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | ? | 子 | 子 | 寅 |
日干は戊土、月支は子月の囚令であり、早速ですが日干は身弱確定です。三柱での五行エネルギーを見てみましょう。
- 木:5.3
- 火:0.3
- 土:2.7
- 金:0
- 水:30.0
上記は補正無しの五行バランスです。日干の戊土に対し、財の水が30と大過しており、三柱で既に日干は極弱という状態です。このため、何時生まれでも身弱となります。これだけを見ると、大変位相の低い命式とも思えますが、これは格局によって変わってくる点が重要です。
坂巻哲也さんの格局
月支が子月・水旺であり、天干にも壬水があらわれているため、財格となる可能性がまずあります。しかし、財の水が大過しているため、従財格となる可能性がある点も見逃せません。まずは従財格となる条件ついて見てみましょう。
- 財(水)が重々とあること
- 印(火)がないこと
- 比劫(土)がないこと
が主な条件となるのですが、年支の寅の蔵干には丙火と戊土が含まれており、一見すると条件に反するような気がします。しかし命造をよく見てみると、寅の天干は壬水で火を剋し、さらに月支の子も寅の日を剋しているため、火は圧倒的に無力であることが分かります。
また戊においても、水を剋す・制するような力は全くなく、無力であることが分かります。さらに、年支ですので日干を生助することもできません。すなわちこのような命造の場合は、従財格と判断できる可能姓があるのです(仮の従財格とも言います)。
ところが、やはり時柱が分からないため、三柱だけでは格局の判断ができません。そこでまずは、財格(普通格局)となる場合と、従財格となる場合の時間を見分けていきましょう。
偏財格となる時間
天干 | 壬 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 子 | 子 | 子 | 寅 |
0時。水が重々となり、従財格
天干 | 癸 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 丑 | 子 | 子 | 寅 |
1時~3時。時柱・年柱が天地徳合となるため不去。また年支が丑土のため偏財格。
天干 | 甲 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 寅 | 子 | 子 | 寅 |
3時~5時。寅に丙・戊が蔵されるため偏財格。極めて低位相。
天干 | 乙 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 卯 | 子 | 子 | 寅 |
5時~7時。時柱が官(木)のみとなるため従財格。位相は普通格局より少し高くなりますが、調候不良のため波乱免れません。
天干 | 丙 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 辰 | 子 | 子 | 寅 |
7時~9時。時干・丙火のため偏財格。辰・子が水局を形成し、極めて低位相。
天干 | 丁 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 巳 | 子 | 子 | 寅 |
9時~11時。時柱ともに印となり偏財格。
天干 | 戊 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 午 | 子 | 子 | 寅 |
11時~13時。地支は午・子が冲去(せっかくの調候が台無しです)。時干は戊土のため偏財格。
天干 | 己 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 未 | 子 | 子 | 寅 |
13時~15時。時柱に比劫が来て偏財格。偏財格の中では最もよい生時ですが、やはり水が強過ぎます。
天干 | 庚 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 申 | 子 | 子 | 寅 |
15時~17時。時柱に食傷あらわれて従財格。申・子水局半合形成します。
天干 | 辛 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 酉 | 子 | 子 | 寅 |
17時~19時。時柱に食傷あらわれて従財格。
天干 | 壬 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 戌 | 子 | 子 | 寅 |
19時~21時。時支に比劫の戊土あらわれて偏財格。
天干 | 癸 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 亥 | 子 | 子 | 寅 |
21時~23時。時柱は水のみとなり従財格。なお亥中の余気・戊土は無力のため比劫無しと見ます。
天干 | 甲 | 戊 | 壬 | 壬 |
---|---|---|---|---|
地支 | 子 | 子 | 子 | 寅 |
23時~0時。時干・甲木、時支・子水のため従財格。
以上のようになり、大体偏財格と従財格となる可能性が半々くらいあることが分かります。
坂巻哲也さんの大運から格局を判断する
坂巻さんの命式・三柱は以上のような状態であることから、最終的には大運と事象を観察して判断するしかありません。以下、坂巻さんのわずかな情報から、格局を推測してみたいと思います。
※こちらのページに坂巻さんのインタビューが掲載されており(2022年のもの)、ウィキペディアの情報と絡めて見ていきます。
大運【甲寅】の時期(16歳~26歳)
1982年、パリー美容専門学校(現・パリ総合美容専門学校)卒業(ウィキペディア)。
【甲寅】は、普通格局であれば明らかに忌(波乱)となる時期ですが、美容の専門学校を卒業しています。ちなみに幼少期は病弱だったという記事もありました。また、『24歳のとき、お腹が痛くなって病院へ行ったらステージ4の癌と診断されました。リンパ腺にも転移していて、当時の病状をお客さまの医師に話したら「若いと進行しやすいのに、よく生還したね」と言われました。』
また、『2年でカットを覚えて、3年目で売上NO.1になって、4年目で店長になって、5年目で独立する…というアホみたいな計画を立てていました(笑)。それでも21歳でカットを覚えて、ちゃんと24歳で店長になったんですよ。』とも答えており、吉凶混在していることが分かります。
そして、『25歳で癌治療を始めて、10年経って再発しなかったら次の人生を考えようと思いました。それで社長に、「これから10年間、会社に奉公します。癌が再発しなければ会社を辞めます」と言いました。この言葉通り、10年後に再発をしなかったので35歳でスタジオVを辞めてapishをつくりました。』とあります。
大運【乙卯】の時期(26歳~36歳)
この時期は天干・地支が官のみですので、もし普通格局であれば大忌神運期であり、命の危機さえある時期です。
しかし、『1998年に原宿に美容院、株式会社apish(アピッシュ)を開業、代表を務める。フジテレビ系列のB.C.ビューティー・コロシアムでは美のプロフェッショナルとして出演した。(ウィキペディア)』とあり、官が喜神である可能性を示唆しています。
また25歳で癌治療をした後は、『そうこうしているうちに10年経って、僕の身体から怪しい影は消えてました。モチベーションが上がると同時に免疫力も上がったんでしょうね。』ともあり、こちらも官が喜神である可能性を暗示。
しかし、25歳からの10年後は35歳であり、大運が切り替わる直前でもあります。ということで次の大運に注目してみましょう。
大運【丙辰】の時期(36歳~46歳)
【丙辰】は戊の従財格にとって破格期です。したがってもし坂巻さんが従財格であれば、この時期に波乱や没落、病難といった事象が出ているはずです。ところが、そういった情報は見つかりません。
インタビューでも、新しい会社を立ち上げ、必至に頑張っていた様子などがうかがえます。また、ビューティーコロシアムにも出演し、名声をあげていたようです。
丙は調候の陽火、そして辰は土旺の時期となれば水を剋すため、偏財格であれば喜神の時期となります。また財多身弱(偏財格)の場合は、印や比劫が巡ると財干を剋すことができるため、財運が高まります。
大運【丁巳】の時期(46歳~56歳)
大運・丁巳は従財格であれば破格(波乱期)。偏財格であれば喜の大運となります。この時期についての記述は見当たりません。特にインタビューでも病気をした等とは書かれていないため、仕事に精を出していたようです。
大運【戊午】の時期(56歳~66歳)
坂巻さんが死亡した時期の大運です。火旺(印)の時期ですので、前運に引き続き従財格であれば破格(波乱期)、偏財格であれば喜の大運となります。
上記のインタビューが掲載されたのがまさにこの大運中であり、『今年12月に還暦を迎えるとは思えないほどスタイリッシュでエネルギッシュな坂巻さん。病弱だったことも癌にかかってしまったことも、すべてご自身のパワーに変えていました。』とあることから、社会的地位を維持しており、明らかに喜の傾向があらわれていることが分かります。
ところが、突如として2024年3月29日、死亡したという訃報が届くのです。ここでも吉凶混在です。なお『晩年は病気療養中であったという。』とあることから、死亡した1~2年ほど前から病気を患っていた可能性があります。
そこで2021年からの流年運をうかがうと、2021年【辛丑】、2022年【壬寅】、2023年【癸卯】と、木と水の強い流年が続いていたことが分かります。ちなみにインタビューが掲載された時は2022年の6月ですので、これ以降に病難があらわれたようです。
流年の推移を見ると、病気を誘発したのはおそらく【壬寅】の秋(金)~、もしくは【癸卯】~であり、時柱と木局半合を形成した可能性もあります。大運地支は午で固有根ですが(子、寅が原局にあるため)、そもそも水が強過ぎるため、衰えていく生命力をカバーするほどの力が発揮できなかったと考えることができます。
したがって坂巻さんの原局および上記の事象から分かることは、坂巻さんは偏財格である可能性が高いということです。ちなみにこれを聞いて、『偏財格なら、なぜ喜の大運で死亡したのか?』と思う方もいるかもしれませんが、これは姓名構造が鍵となります。
坂巻さんのように財が大過する普通格局の身弱は、先天的に病弱傾向にあるため、姓名構造において忌神が優勢となる場合は、たとえ大運に喜が巡ったとしても病弱・早世となる暗示があるのです(実際に幼少期から病弱、また61歳という若さで死亡した)。これは、大運位相とは別のベクトルで、姓名の影響力が強く生命に働きかけているためです。
とはいえ、坂巻さんは先天運位相が元々低めということも大きく関係しています。
最後に、私の判断結果を以下に載せておきます。
- 日干:戊土
- 日干強弱:身弱
- 格局:偏財格
- 用神:戊土
- 喜神:土・火
- 忌神:水・木・金
- 調候:丙火