四柱推命旺

十干と十二支から解命を行う本格的四柱推命の専門サイトです。四柱推命の本質と解命方法を詳しく解説し、ユーザーの皆様の理解を深めていきたいと思います。

なぜ午の蔵干には『己』が入らないのか?

今回はご依頼者様の疑問点に答える形で上記タイトル、【なぜ午の蔵干には『己』が入らないのか?】について解説をしたいと思います。この疑問につきましては、これまで当サイト等でその表面を説明したきたのみですので、今回あらためてその理由・理論的背景について解説をするものです。

なお私の判断では、午の蔵干は『丙、丁』のみとしておりますが、これについては武田考玄氏も同様の考えをもっており、以下のように著書に書かれております。

例えば、古来より、ほとんどすべての命書で、午の蔵干について、(丙己丁)とか、あるいは(己丁)とか言われて来たことは誤りなのです。丙火を蔵さないとするのは問題外ですが、午中に己土を入れることが誤りであることも、理論的、実証的に証明済みのことなのです。

この点については私も同意見です。したがって、以下ではその『問題点』について少し詳しく解説を致します。

午の蔵干が三干となる、その矛盾点(1)

まず、午の蔵干については『丙己丁』とされていることが多いと感じます。私も四柱推命を学び始めた時は、この『丙己丁』で覚えました。そして私の命式は、時柱が【壬午】のため、己(私の場合は印)の力量も計算に入れていたものです。

しかしその後、様々な四柱推命の書籍を読み、また洞察を深めるにつれ、この午の蔵干(丙己丁)に誤りがあることが分かってきました。まずは、『なぜ四正のうち、午だけが三干蔵するのか?』の疑問が出てきます。

ご存知のとおり、午は火の旺支です。旺支とは、四正を構成する地支の一つであり、木・火・金・水に当たる季節の真ん中に位置する、最もその気が盛んとなる地支のことです(土は四方に散じるため四正には含まれません)。

以下、旺支の蔵干をご覧ください。

旺支の蔵干表(午の蔵干が三干の場合)

本気
中気(無)(無)(無)
余気

ご覧のように、午の蔵干だけが三つとなっています。他の旺支は蔵干が二干のみなのに、なぜ午だけが三干なのでしょうか?もちろんこれだけで午の蔵干三干説を否定することはできないのですが、違和感が生じるのは当然のことです(流派によっては他の旺支も三干としている可能性があります)。

ちなみに、なぜ旺支の蔵干のみ二干となるかについては、『旺支は季節の気が最も盛んとなる時であるため、その季節の五行(干)のみ蔵する』ためです。

この時、それならなぜ午のみ中気が入るのか?中気とはなんなのか?という疑問が湧いてきます。そこで、まずは中気や余気・本気について知る必要があります。(なぜ己が入るのがおかしいのか?については後ほどご説明します)

本気、中気、余気とは?

蔵干の中で分類される本気・中気・余気とは、実は、『時間の経過による気の移り変わりを示したもの』です。そして気(五行)とは『干』のことです。

すなわち蔵干においては、蔵干中の気が滞りなく流れることによって、気の連なりが出来ていくのです。これを気運や運気と言います。そしてこの気の連なりは、余気->中気->本気->余気(次の地支)->という風に推移します。

つまり、余気というのは前の地支の『余った気』や『余波』といった意味であり、本気はその地支がもつ最も強い気(蔵干)のこと、そして中気は余気と本気の中間に位置する気のことなのです。

蔵干については以下のような分類となりますが、四柱推命において極めて重要な概念ですので、よく覚えておいてください。

  • 余気:直前の地支蔵干の本気と同一の干(本気が次の余気として引き継がれていく)
  • 中気:余気と本気の中間に位置する干
  • 本気:その地支のうち、最も強い気となる干

何事もそうですが、突然途絶えるということはなく、気においても徐々に強まり、また弱まっていくという推移がありますので、これをあらわしたものが以上の気の流れ、蔵干の推移となります。

例えば巳の蔵干は『戊(余気)、庚(中気)、丙(本気)』であり、余気の戊はその前の地支である辰の本気・戊となっています。つまり地支の気の流れは途絶えることなく流れていくのです。

そして旺支とは、最も季節の気が盛んになった時であるため、蔵干には原則その季節の干(五行)しか含まれないというのがこの疑問を解く重要なポイントです。例えば酉は、金の旺支であるため、蔵干には『庚、辛』のみ含まれることが分かります。子も『癸、壬』のみです。

ところが、午だけがなぜ、火の干(丙、丁)だけではなく、土の干(己)が含まれるのか?これ大きな矛盾点なのです。この疑問について、この説を主張する四柱推命家やサイト運営者に是非投げかけてみてください。おそらくは、言葉を濁すか、無視されるはずです(ただ旧来の考えを踏襲しているか、蔵干についてよく分かっていないため)。

しかし、以下のように午の蔵干を『丁、丙』とすると、四正の蔵干としてもすっきりしますし、理論的にも正しい、矛盾のないものとなるのです。

旺支の蔵干表(午の蔵干が二干の場合)

本気
中気(無)(無)(無)(無)
余気

そして、なぜ午の蔵干が三干になるか?という点については、これまでの四柱推命の古書においても明確な基準や説明がありません。

それでは次は、『なぜ午の中気に己が入るのか?』について解説致します。

なぜ午の中気に『己』が入るのか、その矛盾点(2)

実はこれについても既に答えを示しているのですが、そもそも旺支に中気を入れること自体に矛盾があるのです。なぜなら先ほども説明したように、『旺支は季節の気が最も盛んとなる時であるため、その季節の五行(干)のみ蔵する』はずだからです。

なぜ午だけ、途中火の気が中断されて、土の気となってしまうのか?午は火の旺支であり、火のエネルギーが最も盛んな時期であるはずなのに、なぜ土旺の気である土の気が混じるのか(しかも己は陰土であり、湿土です)?これについては、もうそれだけで大きな矛盾があるのです。

ところでなぜ午の中気に『己』が入ったのか?については、生旺墓絶に絡む歴史的な経緯があります。これについては説明していると大変ややこしくて大変なので、以下に武田氏の解説を載せておきます。

何故午中に己土を入れたのかと言いますと、それは後に説明します生旺墓絶を十干に配するに、土を火に寄せたために、つまり、土=火としていたため、午中に己土を入れざるを得なくなったのです。先ほど述べた通り、生旺墓絶を付するに土を火に寄せたこと自体からして誤りですし、外の旺支、子・卯・酉は、蔵干が二であるのに午だけが三干となることは大きな矛盾なのです。

そもそも、燥土不能生金といわれる土が(土と木については、燥湿が言われる)丙と丁の間にあっても(己は本来は湿土なのですが、火の間にあっては、湿土も躁土となってしまう)、己土の作用は全くなくなってしまうのです。つまり、午中に己土があっても金を生じることはできないのです。結論として、午中に己土なし、の理論が成立しますし、どのような命に対しても、午中丙丁で完全に解明できるのです。

武田考玄【四柱推命学詳義より】

※『生旺墓絶』とは十二運のこと。ちなみに、古来四柱推命では生旺墓絶を十干に紐付けることを試みていましたが、実際のところ大きな矛盾が出てしまい、その矛盾のシワ寄せがこの午の三干理論になります。

以上のことから、この午の蔵干問題については流派による違いなどではなく、旧来からの完全な誤りなんですね。